「依存症回復者に元気をもらう」ということ

よく依存症にかかわるスタッフが、自助グループなどで回復者と交流した後、「元気をもらった」と発言しているのを聞くことがある。
日常臨床で依存症者を援助していて、回復を継続していることを確認でき、自分の仕事が成果あるものだということを再確認したり、回復者自身の話の内容に感動したり、自助グループ特有の連帯感に心動かされたりする。その結果、会合がはけた後、元気をもらって帰るのだろう。
しかし最近上記の要因だけではないのでは、と感じるようになった。
回復者の方と話していると、独特のエネルギーの地場のようなものを感じることがある。そして話した後は、自分が妙な昂揚感に浸っていることに気付く。
回復者には相手を元気にさせるオーラのようなものがあるようだ。
たぶん「元気をもらう」スタッフたちはそのオーラに敏感に反応しているのだろう。事実依存症臨床は、強くはまってしまう人と、妙に毛嫌いする人と、両極端に分かれる。たぶんはまってしまう人は、そのオーラに敏感な人なのかもしれない。
回復者はえてして、エネルギッシュな方が多い。とてもポジティヴなエネルギーである。依存症にとらわれているときのネガティヴなエネルギーが反転した感じである。よく依存症者は、否認が強い人ほど回復しやすいといわれるが、否認のエネルギーの方向が180度転回し、回復のエネルギーに転ずるのだろう。そしてそのエネルギーは周囲の他者のポジティヴなエネルギーを誘発していくのだ。
尚、依存症者の中で、エネルギーの方向が180度転回するポイントが所謂「底つき」と言われるものなのかもしれない。東洋的に表現するなら「陰極まって陽に転ずる」である。