病棟の想い出(9)

当直中、入院患者さんの身体的急変したとき困るのが、搬送先を見つける事。
急を要する事なのだが、近隣の候補とされる病院をあたっても、断られる事が多い。
だいたい「ベッド満床」「当直医が処置中なので後でかけてくれ」などと先方の事務の人に言われる。
なかにはあからさまに「精神疾患のある患者さんは、取れません」と言ってくるところもある。
まあ、他の理由を付けて断ってくるところも、本音はそこなのだと思う。
精神疾患のある人に対する偏見が一番強いのが、実は医療従事者である印象がある。
まあこれは、印象にしかすぎないのだが。「医療従事者は偏見があってはならない」という僕自身の固定観念が強すぎる結果なのかもしれないし、実際医療従事者は、精神疾患のある患者さんの対応で苦労した経験のある方が沢山いるので、その正かもしれない。
なにはともあれ身体的急変がでると緊急処置が終わった後、電話の前に腰を下ろして半ば諦念にも似た感情にとらわれながら、一つ一つ候補病院をしらみつぶしにあたって行くのが、なんとも気の重い作業であった。