精神科治療について

新しい向精神薬が続々と登場する割に、うつ病をはじめとする精神疾患の治癒率(寛解率)は上がっていないように感じる。むしろ、カウンセリング、環境調整、自助グループなどの薬物療法以外のアプローチの方が、うまく回復しているように感じるくらいだ。

結局、精神科において治って行くということは、器質的精神疾患の一部を除いて、成長して行くという要素が欠かせないように思う。自らの心がより良い方向に変わって行くことがないと、精神状態もそのままである。
そして人間が精神的に成長するには、良質な人との関わりが欠かせない。それを提供する環境を作るのがぼくらの仕事なのだろう。逆に向精神薬の処方に頼るのは、その人の精神的成長を妨げてしまう場合があるのではないかとまで考えてしまう今日このごろである。
しかしこう思いながらも、現実の診察ではやはり処方箋を書く場合が多く、ジレンマに陥っている日々である。